2010年5月18日火曜日

デビュー作『鉄男』の衝撃から20年! 塚本晋也監督の変わらない製作スタイル

インディペンデントなる道を切り開いて20年。塚本晋也監督が製作・脚本・監督・出演・美術・特撮・編集......と全てセルフメイドで作り上げた『鉄男』(89)は、インディペンデント映画の金字塔、いやクロガネの要塞だ。都市生活者の肉体が突然、鉄に侵食されていくという不条理なこの作品は、ローマ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞。続く『鉄男II BODY HAMMER』(92)も各国の映画祭で上映され、"塚本晋也"の名前は日本よりも世界で広く知られるようになった。また、サイバーパンクな『鉄男』シリーズだけでなく、官能映画『六月の蛇』(02)はベネチア映画祭コントロ・コレンテ部門審査員特別大賞を受賞するなど、身体性にこだわる独自の作風はより進化を続けている。世界の映画シーンに衝撃を与えた『鉄男』誕生から20周年となった2009年、全編英語による『鉄男 THE BULLET MAN』が完成し、ベネチア映画祭コンペ部門でプレミア上映。5月22日(土)より、ようやく日本でも公開されることになった。温和な性格で知られる塚本監督だが、映画製作に関しては鋼鉄のような堅い意志を貫く。塚本監督のブレない生き方を体感するべし。

──以前からハリウッド版『鉄男』の噂は耳にしていたのですが、全編英語劇となる『鉄男 THE BULLET MAN』はその流れのものでしょうか?

塚本晋也監督(以下、塚本) 舞台は東京ですが、ボクとしては完全にハリウッド版の流れで作ったものです。ハリウッド側とは何度か話し合ったんですが、どうしてもボクが考えているような『鉄男』にはなりそうになかった。それでボクの会社「海獣シアター」での自主製作という形になったんです。日本でもボクの映画はなかなか話がまとまらないのに、ハリウッドでやろうとしたら尚更ですよね。よく考えれば分かること、いやパッと考えても分かることなのに(苦笑)。こう見えても、意外と自分は流れに乗って映画を作ることもできると思っていたんですよ。でも、やっぱり『鉄男』となると、別ですね。

──"鉄男"というキャラクターだけをハリウッドに売り渡すことはできなかった?

塚本 そうですね。『悪夢探偵』シリーズ(06、08)は、元々はメジャー的に展開する"売る"ための企画として考え出したものだったんですが、松田龍平さん主演作として完成した今となっては、そう軽く考えることができない。やっぱり、作り出しちゃうと、どうしてもこだわっちゃうんです。ダメですねぇ......(苦笑)。ハリウッド側からも、「そんなにこだわらないで、もっと胸を開いて、こちらのことを信頼してください」とか言われるんですが、そんな風に言われても、譲れないものは譲れませんからね。向こうの言い分は、人気俳優を起用しましょう。そのためには撮影期間はこれだけで...... と。でも、『鉄男』は撮影や編集に時間を徹底的にかけて、手を尽くすことで面白くなる作品。今回の『鉄男 THE BULLET MAN』は普通なら3週間程度の撮影で済ませる規模の作品ですが、撮影だけで8カ月かけています。『鉄男』の面白さを出すためには、決まった製作期間で済ませることができないんです。

──ハリウッドの人気俳優の名前も挙っていたんじゃないですか。

塚本 まだ具体的な名前が出る前の段階でした。でも、『鉄男II』直後の段階では、こちらがジョニー・デップや、ティム・ロスといった俳優の名前を挙げると、向こう側は興味を示していましたね。『シザーハンズ』(90)で注目を集め始めたジョニー・デップは病的な雰囲気を持つ米国人が当時はまだ珍しかったし、鉄男とハサミ男で繋がる部分もあるかなと。ティム・ロスは平凡な会社員役がハマりそうだった。当時は、ハリウッド版『鉄男』、行けるなと思っていましたね(笑)。

──『鉄男』ファンを公言するクエンティン・タランティーノが製作に名乗りを挙げたことも。

塚本  93年ごろでしたね。いい感じで盛り上がっていた。あれは、乗っても良かったかもしれない(苦笑)。タランティーノは他の人と違って、「ちゃんと監督を守る」と言ってくれていましたから。「チームを組んで共同プロデューサーという形にすれば、映画会社の言いなりにならなくて済む」と言ってくれた。でも、そのときのボクはまだ具体的なハリウッド版のイメージがなく、脚本が用意できていなかったんです。ボクの中で、熱く盛り上がっているものがないとダメ。ボクは器用な職人ではないんです。不器用だけど一生懸命に、作品に愛情を込めることで、ようやく面白いものになるんです。

──映画界で20年間サバイバルを続けてきても、それは変わらない?

塚本 そうですねぇ、心のどこかでは、きっちりした映画監督になって、お金持ちになって......というビジョンを持っていたんですが、どうもそうはなれない(苦笑)。性格なんでしょうね。最近ようやく気づいたんですが、ボクはエラそーに人に指示を出すのが得意じゃない。むしろ、自分で粘土をこねて、じわじわと作っていくタイプ。ディレクターズチェアにも一度も座ったことがありませんしね。松尾スズキさんの映画に役者として現場に行くと、松尾さん用の立派なディレクターズチェアが置いてあるんです。松尾さんは立派な監督だなぁと思いますよ(笑)。

──今回はシニア・プロデューサーとしても名前がクレジットされています。プロデュースから裏方仕事まで、全て自分でやらないと気が済まないんですね。

塚本 現場のことはプロデューサーに任せていますけど、製作費は自分で集めています。『鉄男』以外の作品もほとんど、自分でお金は用意しているんです。8ミリ映画を撮っていた10代のときから、そうですね。映画ってお金を出している人のものなんです。最終判断は、お金を出している人がするもの。それは、はっきりしています。そのスタイルは学生時代から、現在まで変わりませんね。変わったのはカメラぐらい(笑)。それと、ボクの作品は製作期間が長いこともあって、スタッフはボランティアみたいな形で参加してもらっています。『悪夢探偵』シリーズを通して、スタッフが育ち、いい感じで『鉄男 THE BULLET MAN』に挑めると思っていたんですけど、予想外の不況でしょ。スタッフにも生活があるし、ボクにも家族がある。みんなにギャラを払うと予算オーバーしちゃう。昔からのスタッフは『鉄男 THE BULLET MAN』に参加したがっていたので、本当に申し訳なかった。でも、また今度の現場を経験した若いスタッフが、映画界に貢献していくような一流のプロに育っていくんじゃないかな。

──サンディエゴのコミコン2009で行なわれた製作発表では『アバター』の製作費200分の1、とコメントされていました。

塚本 自虐的に200分の1と話したんですが、『アバター』(09)の製作費は200億円と言われていますから、『鉄男 THE BULLET MAN』もそれなりに掛かっていますよね。でも、撮影に8カ月、編集に4カ月要したことで、製作費が膨れ上がったんです。ギャラのことは、いつも考えていますね。スタッフにはこれだけしか払えないなぁ、食事はひとり250円だなぁとか(苦笑)。

──生半可な気持ちでは『鉄男』は出来ないんですね......。国際色豊かなキャスティングについて聞かせてください。

塚本 みなさん、オーディションに参加してくれた人たちです。主演のエリック・ボシックの本職はフォトグラファー兼モデルですが、演技の基礎ができていて、暗黒舞踏を経験しておりアングラ的世界を理解している。しかも日本語がうまい。父親役のステファン・サラザンさんは、フランスの映画誌「カイエ・デュ・シネマ」でボクの作品を紹介してくれた評論家。桃生亜希子さんは主演女優らしいオーラがあり、母親役の中村優子さんはオーディションで素晴らしい集中力を見せてくれた。スタッフもそうですが、キャストも拘束時間が長いので、「こんな条件の映画ですが......」と参加希望者をオーディションという形で募るしかなかった。エリックはエキストラのつもりでオーディションを受けたのに、後で自分が鉄男役だと知って大喜びしていました(笑)。1日だけですが、田口トモロヲさんにも出演してもらいました。前2作に主演された田口さんにちょっとでも参加してもらうことで、『鉄男』シリーズとしての刻印を押して欲しかったんです。

──スタッフもキャストも狂おしいまでの愛情を注ぐことで、『鉄男』ワールドが成立するんですね。『鉄男』の第1作はバブル時代の都市の熱気とその崩壊を予感したかのような内容でしたが、今回は青い目の鉄男が自分のアイデンティティーを見つめ直す物語と言えますね。

塚本 アイデンティティーというか、自分という意識はどこにあって、どこから来たものなのかというテーマは、『ヴィタール』(04)ぐらいから始まったものですね。それまでは"都市と肉体"という2つの対比、対決が主題だったんですが、次第に肉体そのものに意識が移り、『六月の蛇』から『ヴィタール』を撮るうちに肉体の内側へと意識が向かい出したんです。肉体の中の意識はどこにあるんだろうと、さまよいながら撮ったのが『ヘイズ』(05)、そして"夢"という深層心理を描いた『悪夢探偵』シリーズでした。今回の『鉄男 THE BULLET MAN』もその延長線上にあるもの。従来の『鉄男』の世界と"意識とはどこにあるものか?"というイメージとが合致したものと言えるでしょうね。『鉄男』は元々、都市生活者の意識の不確かさ、夢か現実か分からない曖昧な『マトリックス』(99)的なものを描いたものですが、20年経て、よりそういう社会になっているように感じるんです。

──クライマックスは、かつての『鉄男』とはひと味違うものとなっています。撮影スタイルは20年前と変わらないとのことですが、塚本監督の内面は当然ながら変化しているかと思います。

塚本 『ヴィタール』の頃に自分に子どもが生まれ、家族ができたことでやはり意識は変わってきたと思います。テレビで戦争のニュースとか流れると「大丈夫か?」と不安になりますね。『鉄男』もノリだけで作っていいのか? ブッ壊すだけでいいのか? 救いを見せなくちゃいけないんじゃないかとか考えますよ。結局、今回も東京を舞台にしているわけですが、太平洋戦争が終わって60年以上が過ぎて、戦争について話せる人が日本にいなくなってしまった。語り部がいなくなってしまった東京という都市はどうなってしまうのかという怖さですね。平和ボケしてしまって、大切なことを忘れているんじゃないかと。今回のクライマックスは、『鉄男』を見続けてくれている人は「パンクの精神に反する」と感じるかもしれない。以前に比べると、物腰が弱くなっているように映るかもしれない。でも、逆に強い力がないと、暴力的なものから大事なものを守ることができないと思うんです。壊さずに守ることのほうが、もっと大変なんだよってことですよね。

──今後、塚本作品はどこに向かっていくんでしょうか?

塚本 ここ5年くらいはハイペースで作ってきました。決して、手を抜いて量産化したわけではありませんが、これからはより丹念に作っていくつもりです。仕事のオファーがあれば、その企画の中にどう自分のテーマを盛り込めるか考えるのも楽しいですし、仕事が来るのを待っているだけじゃダメなので、自分でも作っていくつもりです。これまで以上に、じっくりじわじわと作っていくしかないですね。

 ミッキー・ロークを蘇らせた『レスラー』(08)のダーレン・アロノフスキー監督は『鉄男』に衝撃を受け、デビュー作『π』(97)を撮り、また『バレット・バレエ』(99)から『悪夢探偵』(06)まで照明スタッフとして参加していた吉田恵輔監督は『純喫茶磯辺』(08)、『さんかく』(6月26日公開)などで注目される若手監督となっている。塚本作品は映画界に有名無形の影響を与えていると言っていいだろう。そのことに触れると、「いやいや、とんでもない」と謙遜してみせる塚本監督だった。普段は物腰が低いが、作品の中では過激なまでに跳躍してみせる。塚本監督は鋼でできたスプリングのようなクリエイターなのだ。
(取材・文=長野辰次)

2010年5月6日木曜日

タモリから森泉まで! ナイナイ岡村が"モテる"理由は......

今回ツッコませていただくのは、映画『てぃだかんかん』の告知のために、様々な番組にピンで出まくっていたナインティナイン・岡村隆史を迎える人々の反応。

 筆頭は、岡村を"大好物"とするタモリだ。4月23日に『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の「テレフォンショッキング」に岡村が登場した際には、しょっぱなから持ってきたポスターを破る音を口で出してみたり、さまざまなちょっかいを出しては岡村に「ちょっとおかしいですよ、タモリさん」と諌められていた。

 実は昨年夏にも、岡村は映画『てぃだかんかん』が撮影終了した際に、イベント「お台場合衆国」の告知も兼ねて「テレフォンショッキング」に登場している。そのときのやりとりはこんな感じだった。

タモリ「(岡村に対して)ちょっと近づきすぎじゃない?」

岡村「あっ、すみません。申し訳ないです(笑)」

(中略)

タモリ「いや、近づきすぎだよ」

岡村「すみません(笑)」

(中略)

タモリ「だから近づきすぎだって(笑)」

岡村「タモさんにくっついとかないとね、画面から外れるかもわかりませんから(笑)」

 さらに、『てぃだかんかん』について、岡村の奥さん役が松雪泰子と聞くと、「え? 松雪さんが奥さん? ええ? 何それ、SF?(笑)」といじっていたのに、今回は何食わぬ顔で「奥さん役が松雪さん?」と聞いていた。

 岡村が来るときのタモリときたら、まるで猫じゃらしを与えられた猫のように、また、フリスビーを投げるよう飼い主にまとわりつく犬のように、異常なテンションで絡み、じゃれまくる。妙にかわいらしいのである。

 また、『あらびき団』(TBS系)のスペシャル番組に出演した際には、岡村が選んだあらびきパフォーマーの面々について、東野が 「これ選ぶ人、通やなあ」「これ選ぶ人、相当ゆがんでるで」 と最高の褒め言葉を連発。

 さらに岡村は藤井に対し、「(東野は)今日あんまカリカリしてはるから。天気が悪いから。あまり言わないで......」と注意をし、「気難しい東野を気遣う」体までしてみせて、抜群の相性の良さを見せつけていた。そういえばこの二人、プライベートでも仲が良いことから『東野・岡村の旅猿 プライベートでごめんなさい...』(TBS系、日本テレビ系)なる番組を不定期でやっているのだった。道理でしっくりくるわけだ。

 そして、4月25日放送の『おしゃれイズム』(日本テレビ系)では、『ぐるぐるナインティナイン』(同)の「ゴチバトル」をクビになった森泉が、いつになくはしゃぐ姿も印象的だった。

 ただ気の毒なのは、「(ぐるナイの)元同僚」として森泉に話題がふられることはまるでない上に、岡村の「メルアドを知ってる女性」の中に、ぐるナイの現同僚・江角マキコはいるが、森泉は入っていなかったこと。他にも、いまをときめく北川景子、正統派美人の黒谷友香の名前が挙がったが、それよりも気になったのは、「最近の恋愛の話」として、十数年前の話を出してくる岡村である。

 「ギャップがモテるんでしょ」と、漫画『中退アフロ田中』(小学館)ばりの恋愛初心者トークをかましてみたり、森泉コーディネートによるいまどきなファッションに身を包み、森泉お勧めという表参道の美容院でC-C- Bのように髪を赤く染められ、登場したときの「いや~、モテた」というセリフは、 「素人童貞」などとよくネタにされる岡村らしい渾身のギャグである。

 誰もが「大好き」だけれど、でも、「そういうの(恋愛)じゃない」岡村。これこそが、タモリを興奮させ、東野をご機嫌にさせるニオイなのかもしれません。
(田幸和歌子)

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